妊婦に席を譲るって実はめちゃくちゃオオゴトなんじゃない?! | ABYSS 〜 アビス 〜

妊婦に席を譲るって実はめちゃくちゃオオゴトなんじゃない?!

 

こんにちは、しどうどんです。

私が会社勤めをするのもひとまずのところあと1日ばかりとなりました。妊婦として約8ヶ月会社に通勤してみて思ったことをまとめておきたいと思います。

 

妊婦様はワガママなのか

ちょっと見渡すと、妊婦が席を譲られた時の態度が気に入らないとか、俺も私も疲れているのになぜ人に席を譲らねばならないのかとか、譲って欲しいオーラを出す妊婦に対して「妊婦様」と呼びワガママ扱いしたりだとか、そんな世界が広がっています。

でも、想像してみて欲しいんです。妊婦って一体なにがどう、妊婦なのかってことを。

 

妊婦に起こる体の変化

妊婦になってみるまでは、私も妊婦のことを「お腹の部分が重たい人」くらいでしか認識していませんでした。それでも「お腹が重たければ歩くのも立つのも大変だろう。席は譲らねばな。」とは思っていたのですが、妊婦の体はもっと予想外に大変な状態に陥っていたのです。

 

妊娠初期

妊娠初期、一見すると普通の人と同じなのでマタニティマークの有無でしか妊婦か否かを見極めることはできません。

この時期はいわゆる「つわり」に苦しめられている時期です。「つわり」って、吐き気とかするやつだよね? くらいの認識だと思いますが、これがまぁすごいんですよ。

 

世界は全て灰色。

口や鼻を通る味もニオイも全てが自分にとって害であるかのよう。この世界は私を拒絶し、私もまたこの世界を拒絶している。

もしもの時のためにマタニティマークはつけてはいるものの、電車で立っている時に座っている人の目に触れると舌打ちされたり危害を加えられるという噂もある。必死にマークを隠す私。ただひたすらに、「大勢が降りる駅」を待つ。

 

自分の中には赤子という異物がおり、世界の中に自分という異物がある。世界中が拒否している。私という、妊婦という存在を「席を譲らねばならない面倒なやつ」として見ている。

でも、まじで、座りたい。気持ち悪い。座りたい。でもマタニティマークを見られる訳にはいかない、気づかれてはいけない、座りたいオーラを出してはいけない、世間の迷惑になってはいけない……。

(おかしいよね、実際は少子化にあえぐ日本で子供を生むって、貢献なのにさ。)

 

そんな時、本当に時々席を譲ってくれる人がいて、もうまじで涙がにじみました。その人が電車を降りる時に再度お礼を言ったりしても足りないくらい、まさしく救世主、ヒーロー、女神、生きていてあなたに出会えてよかった。

 

妊娠中期

「つわり」が明けて、急に世界は色を取り戻しました。食べるもの全てが食べログ3.5以上に感じられ、赤子もまだまだ小さいので体もそこまで重たくない。これならいける! やれる!!

 

そう思ったのもつかの間。黄金の1ヶ月が過ぎた妊娠5ヶ月目あたりから、満員電車で腹にぶち当たってくる人のダメージを強く感じるようになりました。

満員電車、きっとストレスが溜まっているんだろうとは思います。でも、そんなに押さなくても電車には乗れるし、降りられるよ。そういいたくなるような人たちによる強烈なタックル。でも、外から見てもあまり出ていない腹。満員電車の中で、私にはこの腹を守り切ることができない……。

 

そう思った私は、時間をずらして出勤することにしました。少しでも混雑していない電車で。これは、身を守り皆にも迷惑をかけないための対策です。

もし妊婦の時差出勤を認めていない会社があれば、これだけでも導入したほうがいいです。それだけで2つの命と1つの世帯が救われます。

 

妊娠後期

今です。ヤバイです。

駅の階段をのぼるだけで酷い息切れ、呼吸は数分間全く整うことがありません。ちょっと立っているだけで腹……腹の中の子宮部分がカッチカチに固くなります。子宮、通常時は卵サイズくらいしかなくて体の奥の方に収まってますけど、この頃には外から触って「うわ、これ子宮の袋っぽい」って塊が分かるようになってます。やばくないですか? エグいですよね。

 

で、この「子宮カッチカチ」っていわゆる「お腹が張る」という状態なんですけど、血流が悪くなっているために起こります。「え、でもそれお腹痛いだけでしょ? 腹痛くらい誰でもなるよ」って思うじゃないですか!!

腹の赤子は、母体から酸素や血を受け取って命をつないでいるんですよ。その血の流れが悪くなるっていうことは、赤子にとっても「苦しい!」状態なのです。ついでに母体である私も、皮膚はぱつぱつに引っ張られるわ腹は重たく引きちぎられそうになるわ、結構ヤバイんです。「腹が張る」って。

 

立ったり座ったりするのも精一杯。歩くときの効果音は「のっしのっし」、自由がきかない。普通にしていることがしんどい。モンスターハンター2Gで寒い地域であるにも関わらずホットドリンクなしで駆け足するとすぐに体力がなくなってヘトヘトになりますよね。普通に歩いているだけで、あれくらいの速度でHPが減っていると思ってください。

 

これくらいの状況になるとね、優先席に座ってる人をめちゃくちゃ吟味しだすんですよ。あ、この人は杖、仕方ないね。あ、めっちゃ老人。あ、若者、だけど目に見えない病気か障害か何かかな? 的な感じで。でも、かたくなに隠す、マタニティマーク。

なので結局、座った人が普通に降りた時に座りますが、もう座った時の安堵と言ったら! 腹の力をできる限り緩めて、深呼吸。

 

たまに、「あっち空きましたよ!」と言って席を教えてくれる人とかいると、もう、救世主、ヒーロー、女神、生きていてあなたに出会えてよかった。あなたを産んでくれたご両親にも感謝します、って気持ちになります。

 

そこまでして会社勤めするとか、ワガママ

そう思うでしょうね。「妊娠ってハッピーなことじゃん、そこまで無理して働く必要ある? そんなに働きたいの? 自分勝手じゃない?」

えぇ、えぇ、分からんでもないです。でもね、知ってますか。社員として雇用された状態で産休・育休に入ったら手当金が給付されるっていうことを。自己実現、キャリアの継続、そういうのも当然ありますけど、何より大切なのは生活していくためのお金!!

 

産休中はそれまでの給与支給金額の67%、育休中は最初の6ヶ月が給与支給金額の67%、後半の6ヶ月は50%、さらに社会保険料も免除されます。

東京都の女性の平均年収300万円を元に計算してみると、産休に入ってから1年間の育休を取得する1年1ヶ月半の間に約200万円の手当金が支給されることになるんですよね。

 

もちろん、働いているときと比べると手取り収入は約2割減になります。それでも、あるのとないのとじゃ大違いですよね?! だって、これから家族の人数が増えるんですよ?!

 

東京都の20代の共働き夫婦の平均世帯年収は、妻300万円・夫400万円で700万円くらいだそうです。この700万円の収入(手取りにすると560万円くらいですかね)が、400万円(手取りで320万円)に下がるか、それとも600万円(手取りで520万円)に留められるか。

 

これが、「電車で席を譲ってもらえて安全に会社に通えるかどうか」にかかっているといっても過言でもありません。

 

手取りで320万円って、つまり一ヶ月あたり26万円。手取りで520万円は、1ヶ月あたり43万円です。全然違いますよね。

ていうか、月26万円で家族3人が東京で余裕持って暮らせると思いますか? そのあと「2人目……」とか、考えられると思いますか?

さらには子供がいるからという理由で次の仕事も見つけづらくなり、積み上げたキャリアは二度と戻らず、これから先は夫の収入に頼って暮らす……? 人生はまだまだ、あと60年くらいあるんですよ……?

 

ははは!

 

妊婦席座る、職と生活守れる

それでも、妊娠による体調の変化に限界を感じて退職してしまう人がまだまだたくさんいます。なんと、勤め人の6割もの人が妊娠を機に退職するのだとか……。

理由はもちろん色々あるでしょう。でも、もし「満員電車を避けて通勤できたら」「座って通勤できたら」退職する必要はなかったという人もいたとしたら?

それって、めちゃくちゃにもったいないと思いませんか?

 

その人がやっていた仕事、受け取れた給付金、そういうものが全て消え去ってしまったことになるのです。子供が産まれるというプラスはあっても、それではあまりにも悲しいではないですか。

 

妊婦に席を譲る、って「腹のでかい人に席を譲る」だけではないのです。その女性の職を守り、一人の子供を守り、一つの世帯を守り、その家族が幸せに暮らし、教育やなんやかんやにも適度にお金をかけられて、新しい世代を作り上げていく助けになるんです!!

 

イマジン……

妊婦、まじでヤバイです。私はまだあと2ヶ月は腹の中に赤子をとどめておかなければならないのですが、腹がカッチカチに張る度に「あかん……まだ出てくるときやないで……」と不安な気持ちに駆られます。

 

妊婦、自分がなってみて周りを見渡すと意外とたくさんいます。席を譲って妊婦を救い、世帯を救い、日本を、世界を救うチャンスは意外とたくさん転がっているのです。

 

妊婦に席を譲ってくれる人、まじで救世主、ヒーロー、女神、生きていてあなたに出会えてよかった。あなたを産んでくれたご両親にも感謝します。私も、あなたのような優しい人間を育てられるよう、尽力します。